コロナでの気付きが、さらに揺るぎない力に繋がり可能性が広がった【『alt. coffee roasters』焙煎士・中村千尋さん vol.2】

本来の自分と繋がり、イキイキとその瞬間を生き切る女性をインタビューしています。
前回に引き続き『alt. coffee roasters』の店主であり焙煎士、中村千尋さんにお話を伺いました。

◀◀vol.1「地球の裏側に暮らす人の笑顔まで想像し、皆が幸せに暮らせる地球を本気で目指す

インタビュアー・文・写真(人物):mia

 -Vol.1のインタビュー記事でもちらりと出てきましたが、店主中村千尋さんがコロナによって気付いたことは大きかったそうですね。
コロナ禍での大きな変化について詳しく教えてください。

千尋さん:誤解を恐れずに正直言うと、私はどちらでもよかったんですよ。
つまり店を続けても続けられなくても。世の中に向けて発信したいことはずっと変わらないし、その表現のひとつとしてお店という場所があるだけで、形が変わっても発信を止めるわけではないので。
実際にコロナのために経営も苦しくなってきていたので、そんな本音をポロリと言ってしまったら、ありがたいことに常連さんたちから猛反対を受けまして…。
中にはクラウドファンディングを勧めてくれ、なんと登録までしてくれた方までいて、私はこんなにも今の状況に焦ってないのに、お客さんの方がこの場所を、居場所を守ろうとしてくれているって気付き胸が温かくなりました。
それもコロナのおかげというか、危機迫って初めて気付けたことです。自分が思っている以上に『alt. Coffee roasters』を、「居場所」や「ホーム」だと思ってくれているんだということに…。これは守らないとと思いましたね!笑。

コロナ対策として接客時のマスク、換気をされている

-結局、お店の存続をかけたクラウドファンディングはどうなりましたか。

千尋さん:目標金額150万円を達成し、最後には160万円を越えることができました。
私ひとりで始めた小さなお店に、これほど多くの方の支援が集まるなんて想像していませんでした。たくさんの温かい言葉やパワーとともに、ありがたく受け取りましたよ。
この優しさを無駄にせず循環させること、そして社会や地球環境に貢献できるように、これからも活動していこうと改めて心に誓いました。

-実は「完全ビーガン」になったのは最近ですよね、迷いはありましたか。

千尋さん:栄養士の勉強をしていた際、ミルクは日本人の体では消化しにくいのだと学び、ほかの面でも私には体にいいと思えなかった。それは栄養士のための教科書にも載っていること。なのに決まりだからと、給食でほぼ毎日出されている不自然さに違和感を抱いていたんですよね。
さらに私自身、そんなミルクでコーヒーを提供していることにも、実はずっと罪悪感を抱えていました。焙煎カフェなのにミルクなしのラテでいいのか、という迷いもあった。
でも今までずっとあった違和感が、もう無視できないほどに膨らんでいくのを止められなくて…。私自身、テイスティングなどで少しずつでも毎日ミルクを飲むのも、きっとストレスだったのだと思います。
ミルクの代用品をずっと探してはいたけれど、ココナッツミルクやアーモンドミルクなど、それぞれの良さはあるけれどクセが強すぎて、コーヒーの味を引き出せるかというとまた別の問題。
しかもうちは浅煎りだからその点も考えなきゃならなくて。オーツミルク(※)も考えてはみたけれど、実はコーヒー作りの修行で訪れたメルボルンで、一度飲んだオーツミルクラテが口に合わなかった。きっとエスプレッソとの相性もあったと思うんですけど…。苦笑。そのトラウマで、今回も試すには至らなかったんです。
※穀物から作られた植物性ミルクのこと。

-でも今はオーツミルクに切り替えましたよね。そのきっかけやお客さんの反応についても教えてください。

千尋さん:コロナ禍の最中のある日、アメリカ帰りの常連さんが「これで作って」とオーツミルク持参で店に現れまして。そのオーツミルクで淹れたラテが美味しく、「これは行けそう!」と心が躍りました。
すぐにその場にいたほかの常連さんに、オーツミルクだということは隠して提供。後から「実は…」と切り出すと、「美味しかった!それに言われないと気付かない。むしろ浅煎りのフルーティーさが際立っていた」と大好評だったんです。
その反応で確信を得たので、ミルクをすべてオーツミルクに置き換えることを即決。すぐオーダーできるところを探し発注する流れになりました。

浅煎りコーヒーの軽やかな酸味が引き立つ、オーツミルクの「フラットホワイト」

-なるほど、オーツミルクが向こうからやってきたんですね。笑。そして行動の速さ!
これで「完全ヴィーガン」カフェになったわけですが、何か変化はありましたか。

千尋さん:オーツミルクの一件は、小さいように見えて私にとってはとても大きい変化でした。
クラウドファンディングのおかげで危機を乗り越えたとき、本当にもう自分の心に沿うことだけしよう!と心に誓ったんです。
自分が納得のいかないものを出さなくなったことで、さらに自分軸がしっかりとしたようで、やりたいことが益々クリアになり、自分の中にエネルギーが回り出したのを感じています。
今までは社会問題などの発信に対して、非難したり揚げ足を取って来る人に対して落ち込んだり、イライラすることもありました。でもそれは、自分の望まないことを微かにでもしていたから、私の中の自信が欠如していたのだと気付いてしまったんですね。
今はもうそんな風に誹謗中傷する人って、その人自身が弱ってるからなんだなぁと思えるんです。自分に不足感があるから周りに噛みつく。私を批判したり、きつい言葉を投げることでスッキリするならどうぞって、思えるようになりました。
それで私も徳を積めるし「ありがとう!」とすら思います。もう愛と感謝しかないし、もはやそういう人の環境が心配だと思いますね。

-最近は社会問題や環境問題について、千尋さんご自身からの発信も増えているように感じますが、きっかけはあったのですか。

千尋さん:先ほどの話にも通じるのですが、やはり社会的発信について批判などをしてしまう人たちの背景を見ると、ただ世界の様々な情報を知らないだけ、ということも大きいですね。
私は英語で情報収集もするし、それらが日本に入って来るまでに知っていると早々に対処できることもあると思います。例えば最近だとコロナがいい例です。
それを思うと責任を感じたんです。だって私は知っているから、それならもっと発信しようと。
大切なのは、できる限り選択肢を増やしたいということ。新しい選択肢はやはり最初は異質なもので、なかなか受け入れにくい人もいると思います。でも発信を続けることで、それがいつかは当たり前の選択肢になっていく。
誰かが悪いわけではなく、ただ知らないだけなんだなぁと、そういう人たちの攻撃を受けるうちに気が付いて。「私が発信しよう!」と思えたんです。
今まで正直、そういった発信を怠ってきたところがあるので気持ちを入れ替えるきっかけになったんですね。
-素晴らしいですね、千尋さんの責任感の強さと行動力に感銘を受けます!

聞いていると、千尋さんの身に起きた変化はコロナの「せい」、というより「おかげ」と思えるようなポジティブなものが多いように感じます。もちろん、それは千尋さんご自身がそのように受け取り実践されたからでしょうけれど…。
ご自身との繋がりをさらに強化し、ますますパワーアップし続ける店主・中村千尋さんと『alt. coffee roasters』の今後が楽しみです。
vol.3では彼女のように社会問題や環境問題に興味があり、将来自分でサステイナブルやフェアトレードを意識したビジネスを始めようとしている女性に対してのアドバイスなどを取材しました。(mia)

▶︎▶︎vol.3「サステイナビリティやフェアトレードなど社会問題を意識するのは、これからのビジネスでは大前提に

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